“遠投カゴ釣りに行く”となるとそれなりに重い腰を上げて、「よっしゃ、いっちょ行きますか!」と、餃子の王将的熱気ムンムン社員一斉合同決起集会といった暑苦しい気合のようなものを入れなおす必要性にかられるのだが、近所でハゼとかエビといったものを狙う場合そういったものは必要ない。
のべ竿一本担いで仕掛けを垂らせばすぐに獲物にありつけるなんとも原始的な、お気軽な釣りなのである。
この外に出ることさえ息苦しい激アツシーズンの最中、釣りに行こうとなるともう“そういった”釣りしか思い浮かばなくなるのも無理はない。
実際にそうだったわけだが、江戸前のハゼが近場で釣れるらしいというから、これは願っても無い好案件だったわけですね。
しかしハゼ釣りなんて随分前に若洲あたりでやった記憶があるものの釣り場の情報なんてこれっぽっちも知らない情弱ぶりだったから、一体どこへいけばいいんだろうとなかなか良いポイントが見つからなかったんだよね。
江戸川放水路あたりのメジャーポイントに行ってもいいけどちょっと距離あるし、釣れる確証も無いしな・・・と思っていたら大田区にある森ケ崎公園裏のゴロタ場で釣れているという情報を聞きつけて「じゃ、もうそこでいっか」的妥協案に収束したわけです。
なかなか狙うことの無いターゲットだし、とりあえず様子見で行って釣果あがればそれに越したことはないじゃない。
しかし江戸前ハゼなんて料亭の天ぷらでいうと高級品だからね、お土産で持ち帰ることが出来ればこれとないごちそうにありつけるわけですよ。
結局“気軽に釣り”なんて言っておきながら食に関して“空気入れたら”もういてもたってもいられんぞ、という状態になっちゃったんだからじつにお調子者よね。
のべ竿なんてもうどこにあるか覚えてすらいないような状態だったから、前日タックルベリーのジャンクコーナーに刺さっていた500円くらいの竿を調達したんだけど、こんなんで十分かしら・・・
タックルベリーのジャンクコーナーに刺さっていたワンコイン竿。
ノーブランド品は折れてなくてもジャンコーナーに入る運命なんだろうか・・・しかしこれ買取価格いくらだったんだろう。
のべ竿使うの久々だけど、なんかこうマニュアルバイクからスクーター乗った時のような斬新さがあっていいよね。
当日朝、ワタシは同伴と近くの上州屋に寄り、仕掛け、餌となるジャリメと最小サイズのクーラーボックスを入手し森ケ崎公園へと向かった。
一般的なミャク銅突仕掛けと、飽きた時のために簡易ウキセットも買ってみたのだが使う機会あるかな?
しかし仕掛けより竿のほうが安い釣りってどうなんだろう・・・
森ケ崎公園駐車場手前の狭い路地を通りようやく駐車場手前まできたけど、対向優先とかで3台分通過するのに大分待たされたという。
どうもこの公園、下水処理施設の上に作られているようで駐車場もその上にあるからバンパー擦りそうな角度の勾配をウネウネと登っていかなければならないのね。
しかし公園の横に併設されている駐車場というのは気が抜けないな・・・ボールだのなんだの飛んできて当たりでもしたら泣き寝入りじゃない。
今回釣りをするポイントは、森ケ崎公園と言ってもその裏のゴロタ場がポイントなのであって森ケ崎公園とは何の関係もないのだがそのポイント自体に名前が無いからそう呼ばれているんだろうね。
一旦公園を出て、グルっと外周を周った先がポイントになってる。
赤マルでかこったちょうど羽田可動橋の下がポイント。
森ケ崎公園駐車場からは若干距離がある。
中学校のグラウンドの脇を沿うようにして歩いていくとポイントが見えてくる。
ポイントの正面に堂々と鎮座する羽田可動橋。
奥には小さな消波ブロックがあり、手前からゴロタ石が並んでいる。
ゴロタの間にはハゼが好みそうな隙間が空いており、目視で魚を確認できるくらいの水深しかない。
石の表面には茶褐色のダボハゼが沸いており、狙いのマハゼの姿は確認できなかった。
昼時は暑すぎて釣りにならないからそれまでに釣果が出ればいいのだが。
竿先にミャク仕掛けを付けてイザ投入。
釣り場について1分たらずで竿が垂らせるんだからこんな気軽な釣りは無い。
近所のコンビニにでも来たかのようなスタイルで釣りをするワタシ。
問題は“靴”にあると思うがそんなことは眼中にない。
丁寧にマハゼの好みそうな穴を探っていくがなかなかそれらしき反応はない。
餌を落とす途中でビビビッと竿先に反応があり、合わせて見ると茶褐色をした5cmほどのどう見ても美味しく無さそうなダボハゼが付いていた。
このダボハゼがまぁ貪欲に餌をつつくもんでですね、餌を落とす途中ですぐに食いついてくるもんだからジャリメがすぐにかじられちゃうのね。
もうダボハゼしかかからないんじゃないかと疑心案着に陥っている時に、同伴が本命のマハゼっぽい大きなアタリを出したんだけど惜しくも針ガカリしなかったみたい。
そんで我々の右手で釣りをしていた方がマハゼを上げてるのも見ちゃったもんだから、1匹でもいいから持ち帰ろうと大物狙いでジャリメを大きめにチョン掛けしたのが功をそうしたのか。
ジャリメのカットを大きめにして挑んだ正に1投目。
ダボハゼとは段違いの引きをする本命のマハゼ。
餌を取ってから穴場に戻る際の突っ込みはなかなか強烈で、硬めののべ竿が良い感じにしなっていた。
20cm手前の上等な型だったが、今回これ以上の型が出ることは無かった。
マハゼはゴロタ穴の一番深くで餌を取っているようで、棚に着く前にダボハゼに持っていかれぬようオーバーなくらい大きめにジャリメをカットするのがコツのようだ。
これがハゼ釣りにおける“コツ”なのかどうかは知らないが、この後ダボハゼしかかからなかったワタシの竿にウソのようにマハゼが連チャンしだしたんだから面白い。
コツを教えた同伴もしっかりとマハゼを掛けていた。
かかりが浅いと口外れの確率が高く、意外としっかりと合わせないと抜き上げの時に逃してしまうことが多かった。
いい型のマハゼも数匹逃しているだけに悔やまれる。
またマハゼは餌を取るとすぐに暗い穴場へ突っ込んでいくため、ボーっとして合わせが遅れると潜られて根がかりになってしまう。
気軽な釣りかと思っていたら、意外にも竿を垂らすと気を抜いている暇がなく、遠投カゴ釣りのように遠くに漂うウキを眺めながらゆったり過ごすなんていう時間はない。
なんかこう反射神経を試されているんじゃないかというようなスポーティな釣りでしてね、いつの間にか熱中しちゃってたよね。
熱中した結果、いい型のマハゼがクーラーボックスに溜まっていった。
一番最初にかけた特大サイズに加え15cmほどの型が10匹ほど。
期待していなかっただけにこれだけ釣れれば十分じゃないかなと思ってやめちゃったんだけど、実際釣りをしていた時間は1時間半そこそこだったかな・・・最初の30分くらいはダボハゼに苦難してたし。
ポイントに入る時間が遅れてすぐ昼手前になっちゃったというのもあるけど、多分しっかり朝方からやっていればこの5倍くらいの釣果は出ててんじゃないかというくらいコツをつかんでからの追い上げが釣果に反映された気がする。
日が昇りきって暑さが増してくるとマハゼのアタリが遠のいて、目視で確認できていた魚影も無くなっちゃったからお土産に十分という釣果を持って竿をたたんだ。
家に持ち帰ったハゼはもちろん天ぷらに。
クーラーから氷をはった水に移して塩を加え、ぬめりをとってから背開きに。
背開きにした天ぷらのネタ、これが二段分。
中骨はセンベイ用にとっておいた。
これに衣を纏わせ、ごま油を多めに加えた180度の油でサッと揚げる。
ごま油と香ばしいハゼの匂いが食欲をそそる。
キスに似た上品な淡白さがあるが、どこか野性味のある魚らしい味気があって実に美味しい。
マハゼは1年でその短い生涯を終える“年魚”の代表的な魚だ。
そのマハゼのはかない一生のように、舌の上で消えてしまう身をワタシはありがたく堪能していたのであります。
そして江戸前マハゼの天ぷらはこのシーズン5本の指に入る絶品メニューとなった。
意外にも奥の深かったハゼ釣りですが、この季節ハゼ釣りに熱中しすぎて熱中症にならないよう気を付けてくださいね。
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