ふらっと秋葉原に足を向けた時なんかにeイヤホン(イヤホン・ヘッドホン専門店)にお邪魔することが多い。
常に新しい音の刺激を求めているんじゃないかと自分でも驚くくらい音に飢えている自分がいるのだが、常にその欲求に応えてくれる店というのもなかなか珍しい。
まぁラインナップが豊富で視聴できる絶対数が多い店が必然的にそうなってくるというのが自然な流れなんだろうけど、一般的に知名度の低いメーカーなんかも試聴できるから聴き比べという面では非常にありがたい。
ただ、カニ歩きして次から次へと色々な機種を試聴していくと“自分の中でスタンダードになっている音”がブレてくるから大抵は訳が分からなくなって特徴的なポイントを持つヘッドホン過多になっていくから面白い。
世界的なスタンダートSONY MDR-CD900ST
ほとんどのメーカーのヘッドホンの特徴は網羅しているつもりでも、メーカーのクセや特徴が自分にマッチしているか、聴く曲のジャンルにマッチしているかというのを判別するのはなかなか難しい。
かといって店の店員におススメはどれか?なんて最初から聞くことは実に愚かしい行動であることは過去の体験を踏まえれば大いに納得できる話なのだが。
自分の場合スタンダードに良い音を聴くヘッドホンと、刺激が欲しい時に聴くヘッドホンという風にその時に気分によって使い分けしているのだが、それはあくまでも最低限求められる音質が備わっているという最低条件があってということは付け加えておきたい。
スタンダードの中でもハイクラスな音質をベースに持つSHURE SRH-1540
“重低音重視”なんていうジャンルで上がってくるモデルやメーカー(B〇ats)も多いが、特徴を重視するあまりベースとなる土台がガタガタなんていうヘッドホンは腐るほどあるし、それをありがたがって崇拝している層も一定数いるから市場がなりたっているんだろうなぁ・・・
ハイレゾに対応の SONY MDR-Z7
良いのか悪いのか、これ良い音するよなんて言っときながら自分の中でのスタンダードを持っていない偏った考え方の人が多いし、店員の中にもあふれてるんだから恐ろしい。
本当に良い音に触れ合う機会が無ければ、ただ特徴的ななり方をするものを気に入ってしまうという実に現代人にありがちな発想に陥ってしまう。
ほんとに多くの中から選びだしたものであればいいのだが、大抵はおススメや他人のレビューを鵜呑みにして買う人がほとんどだろうから余計にそういう選び方に偏向していってしまうんだろうか。
まぁそんな話はさておき、以前ふとeイヤホンに立ち寄った際に一聴しただけで触手が動いてしまうモデルに出会ったのでここに紹介したい。
finalというメーカーをヘッドホン業界で目にし、実感として把握するまでかなりの時間を要したのだが、それはfinalというメーカーが自分の記憶の中で実に曖昧な記憶としてしか残っていなかったからかもしれない。
finalの代表者の名前(故高井金盛氏)をみてう~むやはりとうなずかざる得なかったのはヘッドホンという斬新な枠でその名前を再発見させられたからに違いない。
今でこそイヤホン・ヘッドホンでの活躍が著しいfinalだが、古くはハイエンド向けのオーディオコンポーネントを手掛けていたアナログオーディオメーカーであったことはほとんど知られていない。
私自身もfinalのプリやパワーアンプを中古市場でチラッと見かけたくらい(市場流通数が極めて少ない)だから2007年から出資を受け2009年からイヤホン・ヘッドホン業界に参入していたなんて夢にも思っていなかった。
わたしが手にしたのはSONOROUSシリーズのIVとVIだったのだが、聴く前から他モデルとは突出していたのは個体の重さとデザインからくるものだったのかもしれない。
ハウジングと一体感の無いデザインはAKGっぽいのだが、金属を多用しているせいか高級感があり、そして重い・・・
500gに迫る重量だから長時間リスニングするような使用や、スタジオ向けの使用は考慮されていないのだろう。
付属の着脱式ロックケーブルはクセもなく非常に滑らかだ。
ステンレス切削とABSハウジングによる剛性は高く、共振や低音によるビビリ音などは一切排除される。
ハウジングとイヤーパッドの形状は円形でイヤーパッドとアームの素材は同一素材でハリがあるので馴染むまでは多少硬く感じるかもしれない。
IVとVIをしばらく聴き比べているとより特徴を色濃く出ているのがVIという印象だった。
上位機種とはいえ、IVはVIに比べ低音に締まりがなく高音の伸びが控えめに感じたのだがVIの持つポテンシャルが高いことはすぐに分かるのではないかと思う。
低音がタイトで高音の伸びが強いと一見してドンシャリ系と勘違いするかもしれないが、そんな枠に埋もれることのない、美しく透き通るような高音の伸びは他社を寄せ付けないまさに孤高の存在。
低音のタイト感はピュアオーディオとは別にサブウーファーを取り付けたかのような分離した鳴り方をする(DENON AH-D7200)
ハイブリット型(ダイナミック型+BA型)の特性もあるのか鳴り方にくせがあるもののモニターライクではなくより音場が広い印象だ。
ボーカル等だと他のモデルよりもう一歩先が見渡せる感じで非常に相性が良い。
中高域に物足りなさを感じるかもしれないが、それにも増して高域の透き通るような美しさにうっとりしてしまって妙に聴き入ってしまう中毒性がある。
スタンダードに使用しているSHURE SRH-1540に戻ると中高域の厚みが戻ってくる感覚があるが、解像度を失わずに中高域の厚みを持たせた1540はやはりさすがの一言である。
全音域でクセがなく、解像度と音楽性を内包させた1540は正に究極のスタンダードと言っていいかもしれない。
イコライザーをいじって特性を変えるようなその場しのぎの音質改善では言い現しようのない高音特徴を持ったヘッドホン、それがSONOROUS VIだ。
鳴り方のくせはさておき、この音が自然と受けれれる人であればどんな高級機種をもってしてもかなうものはないと言ってしまってもいいかもしれない。
普段のリスニングに飽きた時、ふとクセのある美音に現を抜かすのもいいかもしれない。
ただSONOROUSにおいてそれは偏向というあやまった選択でないことは保証できる。
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