前回初島を訪れた際、ワタシは美味しいお魚(イサキ)を一匹もあげられなかったことに危機感を覚えていた。
それにもましてメジナ一枚という不調ぶりもあって初島という漁場に半ば苦手意識を持ち始めてしまっていたのである。
大体風が強いことが多いから遠投カゴ釣り師にとってはなかなか安定した釣り場を確保することが難しいのだが、竿を出せる場所も限られてしまっているとくれば釣り場としてのモチベーションは下がる一方だ。
第二漁港は先端で一人しか竿が出せないし、第一漁港が空いていることはあまりないので初島で遠投カゴ釣りを考えるなら第一漁港を先手で早く押さえることが肝と言っていい。
風が弱く波が時化ていない時は第一漁港の根元にあるポイントからでも竿が出せるが、やはり水深がとれないため第一漁港に比べて釣果は落ちてしまう。
そんな不安を前もって知っているはずの我々であったのだが、9月も後半に差し掛かる頃ミヤナガ氏と待ち合わせして東名高速を走っている頃にはすでに熱海港から出る始発便には間に合わない時間だった。
もうどうせ第一漁港は空いてないだろうしと中だるみ的なテンションで熱海港に着いた我々は熱海港最寄の釣具屋で解凍を予約していたオキアミを受け取り第二便に船に乗り初島を目指した。
熱海港は風も静かで天気も良く穏やかな景色だったのだが、船が動き出すと景色は一変してしまった。
15分ほど船が進むと次第に風と波が強くなりだし、船が大きく振られだすととても船内で立っていられるような状態ではなくなってしまった。
これまで何度か初島に釣行に行っているが船がこれだけ揺れるのは初めてである。
船の後方の甲板は船体にぶつかった波が水しぶきをあげていた。
子供は揺れの中ではしゃぎ遊んでいたが、いい歳こいた大人が同調して遊んでいる風景に若干の違和感を覚えていた。
船の揺れで遊びたい年ごろなんだろうか・・・
子供が転んで怪我したどうのこうのなんてつまらない話をする気などさらさらないのだが、いい歳こいた大人が転んで怪我したなんて現場は見たくもないんだよね。
「危ない、危ない」なんて言ってないで“大人しく”席に座ってりゃいいのにさ。
まぁ、そんなこんなで揺れに耐えること30分、船は予定通り第一漁港に着いたのだが、案の定先端からポイントは埋まっていて、手前は空いていたのだが波を被るという状況だったために早々にして第一漁港は諦めてしまった。
風が強くて波も高いのに逆によく釣りしてるなっていうくらいの状況だったから始発で行ったところで多分第一漁港ではやってなかっただろうなと諦めはついたものの、ポイント探しに難儀しそうな予感がプンプン匂っていた。
第一漁港根元のポイントも高波の影響か釣り禁止の看板とロープが張られ釣りができるような状態ではなかった。
この前の台風の影響だろうか、鉄柵が根元から抉られて、コンクリートが裂けている。
とりあえずこの強風なら風裏に行くしかないということで第二漁港に向かった。
あれほどの強風が第二漁港にさしかかる手前の道から嘘のように静穏に変わるから面白いものだ。
第二漁港の先端が空いていれば話は早いのだが、遠目からでも人が入っているのが分かるからテンションは上がらない。
第二漁港に着いて対岸の灯台の下のポイントで三人ほど竿を出している人がいたが確かあそこで以前竿を出していたら釣り禁止どうのこうのとやかく言われたなと思っていると、管理者っぽい人がやってきて注意しだしたので我々と同じ光景を見ているようだった。
あそこで竿を出して何か困ることでもあるのかと思うのだが、あくまでも釣り人目線なんだろうな・・・
さて竿を出せるポイントとして堤防は早くも選択肢から消えてしまったのだが、第二漁港を更に奥に行った場所に良いゴロタ場があったことを思い出した。
風もないし足場の良い大岩があればそこから投げられるだろうと午前の部はゴロタ場からのスタートとなった。
第二漁港からこの足場の悪い岩の間をぬってようやくポイントを押えることが出来た。
今回のタックルは
宇崎日新 INGRAM BLACK EDITION 4-550
ABU REVO BIGSHOOTER WM60
80mほど遠投すれば竿1.5本ほど棚が取れそうなポイントだ。
ミヤナガ氏は10mほど奥に行った足場の良い岩場から投げるようだ。
第一漁港とはうってかわって風も無く非常にいいロケーションである。
棚は竿1本から探っていくことにした。
恐らくこのポイントにはまだ魚が寄っていないだろうからと、手返しよく仕掛けを投入していると我々の右手の方から何やら甲高い雄たけびのようなものが聞こえてきた。
せっかく釣りを開始したのにこんなところで気分を害されてはたまったものでは無い。
ガン無視しながら仕掛けを投入していると遠くにあるウキがスッと海中に引き込まれた。
竿にググっと重みがのり竿がしなるが、最初の一撃をかわすと遠くからヒラヒラと魚体が海面に浮いてきた。
イサキか!?と思ったが手前に寄せると活性の上がった淡いグレー色のメジナだった。
30cmそこそこといった大きさですぐにリリースしてしまった。
さて、魚も寄ってきたことだしどんどん仕掛けを投入しようじゃないかと意気込んでいると、さきほどの雄たけびのようなものが更に音量を増して聞こえるようになってきた。
まさか拡声器でも持ち出してきたんじゃと思って先ほどからガン無視していた右の方角を見るとやはり拡声器を持ち出して来ているようだった。
よくよく耳を傾けてみると、“ダイビングしているから邪魔だどけ”ということらしい。
我々の横には大きな看板で「この先遊泳禁止」と書いてあるのだが・・・
いやあんたがたが泳いでる方には仕掛け投げてないよと言ってやりたいところだが、我々の仕掛けに魚が寄ってしまうと面白くないのか、しきりに拡声器を使って同じことを繰り返している。
別に釣り禁止の場所でも無し、海も魚もあんたらだけのもんじゃないんだから何をそんな大きな声で文句を言うことがあるのかと、しばらく“オウム拡声器”を無視していると、何やら漁港のおっちゃんらしき人物が原チャでさっそうと現れ我々の元へとやってきた。
ダイビングスーツに古びたシュノーケリングを付け、網のようなものを担いでいる。
向こうで叫んでいるダイバーと同じく「釣りするな」と言ってくるのではと思い一瞬身構えてしまったのだが、まったくそんな素振りも無く気持ちのよい挨拶を掛けて来てくれたもんだから驚いてしまった。
「あのぅ向こうで(アホが)釣りするなと叫んでいますが・・・ここでやらないほうがいいですかね?」と尋ねると、
「いや、いいよいいよ。おっちゃんここから漁に出るからさ、ちょいと邪魔するよ」
どうやら地元の漁師さんのようで、我々が遠方からわざわざ釣りに来てくれていることを喜んでいるようだった。
「仕掛けちょっと右に投げますんで」
「あ~いいよいいよ、手前にコマセ撒かれたらあれだけど 遠投するんだろ? はっはっはっ」
こんな会話を交わしている間にも右手からは“オウム拡声器”が同じことを叫んでいる。
この会話を叫んでいる奴らに間近できかせてやりたいもんである。
しばらく世間話をしているとミヤナガ氏とワタシの間のゴロタ場から地元の漁師さんはスーッと海に潜っていってしまった。
さて先ほどの“オウム拡声器”は一度やんだかと思っていると更なる音量を増して同じことを繰り返しはじめた。
さすがにうっとおしく思っていた我々は昼飯の時間も考慮して早々にゴロタ場のポイントを切り上げることにした。
ちなみにゴロタ場での釣果はワタシがあげたメジナ一匹にとどまった。
気持ちを切り替え我々は第二漁港を尻目に再度第一漁港に向かうと、朝方猛烈に吹いていた風が若干弱まっているようだった。
第一漁港を見ると先ほど波を被っていたポイントがそのまま空いていたので、そこに入ることにした。
さてようく誰にも邪魔されず、良いポイントで釣りができるなということで、我々は安心して漁港の定食屋で刺身定食を堪能することができた。
第一堤防から正面に100mほど投げたところが今回のポイントである。
赤〇でかこったところが今回の我々のポジションだ。
棚は1本と2ヒロ(←ここ重要です)
仕掛けを投入すると一投目でいきなりウキが沈んだ。
この引きは・・・この引きは・・・私が前回逃した美味しいお魚・・・
お馴染みの引きに期待を持って巻いていると、ワタシが待ち望んでいた美味しいお魚が浮いてきた。
一投目にしてイサキをゲットしたワタシはもうこの一匹で初島に来たかいがあるじゃないと、前回沈んでしまったモチベーションをようやく取り戻すことができたのである。
この後イサキはコンスタントに釣れ続け、マズメから夜に差し掛かるころ合いには豊漁といって差し支えなのない数をあげることができた。
大小さまざまなサイズだったが食べ応えのあるサイズが揃った。
ワタシがイサキをポンポンあげているなか、ミヤナガ氏はその横で底知れぬ大物を今か今かと狩人のような眼差しで鋭い視線をウキに浴びせていた。
彼は過去幾度となく大物と対峙し、実際にあげてきた実績を誇っている。
伊豆大島でのギネス級のカサゴといい、ハギといい・・・数はワタシに劣るもののサイズでカバーしてきた一発を持っている。
パワプロでいう特殊能力“一発男”である。当たればデカいが確率は??
ちなみにパワーはDコントロールはCである。
わたしは高打率でヒットを送り出す4割打者と言ったところだろうか(自称)
パワーS コントロールA(自称)
ワタシはミヤナガ氏のウキの沈みに並々ならない期待を寄せているのだが・・・
マズメに差し掛かるころ合いにようやくミヤナガ氏にイサキとは違う大物のアタリが出たので、ワタシはすぐさま竿を置き彼のファイトを見守る形となった。
INGRAMのREDエディションがグーンとしなり、中々いい引きをしている。
遠くから海面に仕掛けが浮いてこない時点で大物確定なのだがはたして・・・
バシャバシャと海面を叩く黒い魚体。
ハリス3.5号だし引き上げられるだろうとハリスをたぐってあげたことを反省するレベルの大きなメジナだった。
ワタシのハンド測定でも軽く40は超えているだろうか。
しかもオナガとクチブトの同サイズを2枚も釣り上げてしまった。
いやぁさすがだ・・・と思っているとまた引きに耐えている彼の姿が目に入った。
またメジナかと思っていると、手前10mから右へ左へ魚が走り出すではないか。
サバ・・・いやソーダか!?
急激な魚のアタックに竿がしなっている。
5m手前でもグングンと左右に振られるも次第に魚体が姿を現し始めるとワタシは「おおっ!」とうなってしまった。
黄色のテールに青い魚体
こりずにタモを使わずハリスで引き抜いてしまったが。
見たら分かる“青い奴”やん!
イナダに差し掛かろうかというサイズの貴重な青物だ。
夕マズメの活性の高い時合で仕留めた正に狙いの一匹。
う~む彼の特殊能力は流石だ・・・さきほどパワプロの勝手な能力値をあてがったわたしは大きな間違いをおかしているのだな。
釣りにパワーやコントロールなど関係ないのだ。
いやぁでもなんかこう青物ってメジナとかイサキとかそういうのとは違った嬉しさがあるよね。
群れできているのは間違いないだろうとその後連投するも青物がヒットすることはなかった。
その後時合が過ぎてしまうとパッタリとアタリがなくなってしまった。
あたりも暗くなるころ合いに我々は竿をたたんだ。
今回の釣果はイサキ、グレ、に青物を追加したかなりの豊漁釣果となった。
その後我々はエクシブ初島に向かい釣りの疲れを癒しに向かったのだが・・・
ディナーのバイキングで調子にのって食べ過ぎたワタシはお腹の調子を崩したという。
あとクーラーボックスの氷が足りなかったんで
製氷機から氷ちょっともらいました。
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