泉津港でメジナの釣果をあげ、意気揚々と八幡荘に戻ってきたのは15時ごろだ。
夜の部に向けて体力を回復するためすぐに横になり、布団をかぶっていざ眠りにつこうかと思ったのだが、なにやら騒がしい音がそれを阻害する。
ゴトゴトと部屋の隅にあった重量のある衝立を移動し、石油ストーブの前に運び出したミヤナガ氏が例の断崖ポイントで濡れたジャケットをどうにか乾かそうと模索しているようだった。
乾かないと思うがやれることはやっておきたいとする彼の気概を損ねる気はない。
乾く、乾かない、乾く、乾かない・・・・そんな思考がグルグルと頭を駆け回っているうちに眠りについてしまった。
夕飯を18時に設定していたため、つかの間の休息は2時間そこそこしか取れないと分かってはいるのだが、実際眠りについてしまうと中々起きるのが辛い。
下から八幡荘の女将さんの「夕飯ほぉえええええ」という声が聞こえ、18時になったことを把握するのだが、たかだか10分程度しか寝ていないような錯覚にとらわれてしまうのは前半にかなりの体力を吸い取られてしまっていたからだろう。
あと5分、あと5分でいいから、と思いつつも用意された夕飯のために重い腰をあげ食堂へ向かった。
えぇ、えぇ、結局この夕飯見てしまうと眠気は食欲に瞬時に置き換わってしまうんですね。
この金目の煮つけと伊勢海老は八幡荘定番メニューで、これを目的に伊豆大島に来るだけでも価値のある逸品メニューなんですね。
写真には写っていませんが天ぷらの盛り合わせも付いてます。
夕飯を味わった後、我々はせかせかと夜の部へと向けて準備を開始したわけなんですが、結局ジャケットは乾いていたのかどうかが気になっていた。
本人は乾いていると言っていたが、触ってみるとジメっていた。
ま、別にオレが着る訳じゃないからどうでもいいんだけどね・・・・
夜の部は再度泉津に向かおうと思っていたのだが、岡田の風は随分と弱まり、釣りのしやすい状況になっていたため岡田港をポイントにすることにした。
岡田港最奥の灯台下から車の出入り口まで人が等間隔で並び、冬場にしてはかなりの釣り人が竿を出していた。
ウキが隙間なく点在していたので、恐らくほとんどがカゴ釣りをしていると思われる。
ウキの位置が近いので遠投カゴ釣りというよりはサバをターゲットにした投げサビキ仕掛けがほとんどだろうな。
釣りの並びに出遅れた我々は奥から大分離れた堤防が“く”の字に曲がるポイントで竿を出すことにした。
隣の釣り人を見るとサバが回ってきているようで、コンスタントにサバをあげているのが見えた。
わたしはイサキ狙いだったため遠投して深めの棚で探っていくことにした。
岡田のサバとイサキは面白いように二層に分かれているので、手前の表層でサバが寄ってきている時は遠投して棚を深くするとサバを回避してイサキを狙うことができる。
経験上60m以上遠投しないと手前でイサキがかかることはあまりない。
泉津と同じタックルでやや遠目を狙うため15号のカゴを使用し、70~80m付近の深棚を狙った。
シーズンで無いことは理解しているが、ここは伊豆大島だからね・・・と胸に刻み遠投を続けるが一向にウキに反応が見られない。
数投してモゾモゾとウキがおかしな反応を見せるので回収してみると嫌~な魚が・・・
そうハタンポ。
どこかでは“破綻ぽ”なんて言われるくらいの魚だから釣り人の間では釣れたらおしまいなんて話を聞いたり聞かなかったり。
そんなことにもめげずに連投するもわたしのウキが沈む気配は一向に見られない。
遠投カゴあるあるの倦怠感が漂うなか、そんな雰囲気を破りいつの間にか大物と対峙しているミヤナガ氏の姿が目に入った。
昼に折ってしまったサブとして3号竿を使用しているが、明らかに竿の曲がりがおかしい。
弓のようにしなった竿先が海に吸い込まれそうな勢いだったためわたしは一時的に自分の仕掛けを回収しミヤナガ氏のやり取りを見守ることにした。
最初はデカサバでもかかったのかと思ったのだが横に走ることは無く、ただただ竿に重みがのるような引きだ。
ようやく大きな白い魚体が海中に浮き、特徴的なスタイルからすぐにウマズラハギだと分かったのだがサイズが異常にでかい。
と同時にタモを出すことを忘れていた・・・マズイ。
ま、でもハギなら暴れないし手繰ればあがるだろうということでハリスを手繰ってあげることにした。
さすがにこれを竿で抜き上げて3号竿を折ってしまうともう彼に竿は残されていないしね。
いやぁ、しかし重いのなんの。
水汲みバケツを汲んでいるような感覚でハリスを手繰り寄せるとようやく魚があがってきた。
デカッ・・・・このサイズ感だからね、60cmくらいあるよこれ。
夜釣りでこの魚をフッキングさせるテクニック・・・いやお見事。
どや顔の裏でもう彼の脳内には“肝”の存在が大部分で占められている事だろう。
いやぁ彼には突破口を切り開く特攻隊長の異名を授けようではないか。
そして面白いのが、このカワハギを“カワ”きりにミヤナガ氏の竿にサバが回りはじめ、もう入れ食いなんじゃないかというレベルでサバが連荘しだしたこと。
横目で近投でサバが連荘しているを羨ましく思い、20~30mくらいで仕掛けを流すと面白いようにサバが釣れ始めた。
サバ美味しいし、イサキ回ってないからサバにターゲット変更しようっと。
型のいい40cmクラスのサバがウキをコンスタントに沈め、釣れたサバを折って〆ている間にウキが沈むという流れ作業へと移行した。
サバはみるみるうちにクーラーボックスを埋め尽くし、もうこれでいいだろうというレベルまで積んで納竿となった。
サバの入れ食い途中にも、イレギュラーに超遠投して棚を探ったりもしたのだが夜の部はサバとデカハギのみの釣果となった。
昨今サバが高騰している中、ここまで数が上がれば文句はあるまい。
デカハギのせいでグレの大きさがかすんでしまっている。
サバは計14匹という釣果だった。
この後サバの捌きで疲れ切っていたわたしは八幡荘に戻り、風呂に入ってすぐに就寝してしまった。
釣りの後の疲れ切った身体で寝る感覚というのは非常にクセになるものがあるのだが、わたしの場合えてして睡眠の質を高めるあまり睡眠時間が長く取れないという事態に陥ってしまうのである。
睡眠の質が高いから疲れは取れているのに、一度起きてしまうとその後ぐっすり眠れないのだ。
半金縛り状態で朝6時ごろ女将さんの「朝食ほぇええええ」という声を聞いた時には、すでにその声を予想できる状態であったといっていいだろう。
この日は本来15時のジェット船を予約し午前釣りをする予定だったのだが、それは前日に雨で釣りができなかった場合の保険としてつくっていたスケジュールだったため、前日は天気の崩れも無く釣りができていたので、予定を10時40分のジェット船に変更していた。
朝食をとってぐっすり二度寝したいところだったが、魚の発送手配やレンタカーの返却もあるため、ほんと悪あがき程度の二度寝をとって八幡荘を後にした。
実はこの釣行を実施する前に単独で館山へ遠征に行っていて、ものの見事にボウズだったため多少自信を削がれている部分があったわけなんですが。
こうして伊豆大島にいくと釣果に恵まれて自信を取り戻すことができる。
冬の釣りというのは釣り人にとって(特にカゴ釣り師)はスランプ的要素を多く含むんですが、そういう時に伊豆大島に足を運んで魚の引きを味わうと次のシーズンへのモチベーションになるんですね。
だから自分的には、冬の伊豆大島はシーズンに向けての調整的な役割を担っていると思う部分があったりします。
だからもし、冬にモチベーションが落ちて釣りを忘れかけている人がいたら伊豆大島に足を運んで欲しいなぁと思うね。
そんなこと言っといて、またすぐ行くあたり、ただシーズン待てないだけだろと突っ込まれそうだが。
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