この記事はアシカ島釣行の前日に前哨戦として行った城ヶ島でのアクシデントを記したものである。
本題であるアシカ島釣行については後日書くつもりなので、“魚”や“釣果”についてのワードは期待しないでいただきたい。
都内からアクセスのいい沖磯で尚且つ釣果が望めるポイントはどこか、という実に安易な考えを集約していくとアシカ島(神奈川)にたどり着いた。
もっと他にもあるんだろうけど、まぁいいじゃないカゴ釣りで行くのは初だしメジャーなとこでってことでここに決まったんだけども。
沖磯という我々にとって未知の領域に踏み込むわけだから、最初は雰囲気さえ堪能できればそれでいいんじゃないかという釣果二の次感が漂っていたのだが内心心の中では“沖”というワードに心を弄ばれていたことは隠しておきたい。
まぁ結局隠し切れないこの気持ちを城ヶ島磯前哨戦という形でアシカ島釣行の前日に迎えたわけなんですが・・・
“やめときゃよかった”と後で後悔する釣りってこうやって無駄に張り切ってる時が危なかったりするのかな。
アシカ島釣行の前日、城ヶ島の駐車場でOKN氏と落ち合ったのは朝5:00のことである。
少し早めに着き車内で寝ていたわたしはOKN氏に起こされたのだが、その手法は直接車体を揺らすことによるものだった。
スマホ鳴らせばいいじゃないとも思ったが、スマホがマナーモードであることと、身に着けておらず振動が伝わらなかったらということを瞬時に判断しユサユサと車を揺らした彼の判断は正しい。
新手の起床方法ですぐに起こされた私はすぐさま背負子の準備を始めた。
この日の城ヶ島はただただ翌日の“沖磯”という一大イベントのための噛ませ犬的な役割だったから、とりあえず何か釣ってモチベーションを上げようというのが目的だったわけですが、どうもこの時期の城ヶ島はあまりいい思い出が無い。
一発あればそれでいいのだと思いつつも沈まないウキを長時間眺める恐怖を思い返すとあまり士気があがるものではない。
本当にモチベーション上げに来たのかと疑問に思うかのような重苦しい雰囲気で我々二人は城ヶ島のホテル下の磯へ向かった。
土曜日ということもあってポイントが取れるか不安もあったが、運よく目当てだったポイントが空いていたので多少重苦しい雰囲気は薄らぎ、さぁ景気良く行こうじゃないのと士気が上がりだしたのもほんとつかの間だった。
仕掛けをつくりお得意の両軸タックルで遠投カゴ釣りを始めて1投目。
一番期待が膨らんで釣果に思いを巡らせる素晴らしき1投目。
ほんと1投目。
左の死角だった磯の隙間から1台の漁船が磯すれすれをかすめるように通過していった。
もうね漁船に気づいた時にはすでに手遅れな位置にウキがあったのね。
目の前で優雅に道糸の上を通過していった漁船のエンジンフィンに道糸が絡まって嫌な音が・・・・
パッツン。
1投目にして一瞬で仕掛け全損である。
これだけヤル気を削がれる事態はなかなかないんじゃないかな。
しばし茫然としたよね。
まだOKN氏がフカセ釣り始めるまえから、もうすでにわたしは釣りをする気を失いはじめていた。
全損事故からすぐに仕掛けを作り直す気力もなく、わたしはしばらくOKN氏のフカセ釣りを眺めるばかりだった。
まぁこうして釣りを眺めたり、海を眺めるのも悪くないななんてボーっと景色を眺めてどれほどの時間が経過したか思い返すことができない。
長い間OKN氏のフカセ釣りを後ろで眺めているだけだったわたしは、大量のオキアミと付け餌を無駄にして、もう磯で寝ようかななんて思い始めていたんだけど何か釣らなければ前哨戦とした城ヶ島に来た意味を失ってしまうと危機感にさいなまれはじめた。
気温の上昇とともに多少ヤル気を取り戻したわたしは渋々と再度仕掛けを作り出したのだが、未だに釣果が出ていないOKN氏を横目に釣りとしてのモチベーションはほぼ皆無に近かったといっていい。
一抹の期待に胸を膨らませつつ、再度仕掛けを投入しはじめたが・・・・まぁ気持ちが魚に伝わってるんじゃないかというほどウキが沈まない。
それはOKN氏も一緒なんだけど、多分フカセ釣りの彼の方が焦っていたに違いないんだよね。
だって同じポイント攻めてるはずのフカセ釣りにあたりがないんだからカゴ釣りであたりなんてないでしょ、っていうかここ魚いないんじゃないの。
城ヶ島は魚いなくなったなぁ、なんて思って仕掛け回収してたら針の先に親指サイズくらいのフグが付いてた。
いいんだよこれで、魚のランクとか大きさとか関係ないんだからね。
とにかく魚釣れればいいんだからさ。
フグすら釣れてないフカセ釣りの“方”もいるから。
そんなこんなで時間が過ぎていくとOKN氏は釣り自体を諦めたのか、撒餌を中断し、付け餌を垂らして置き竿で放置という荒行に移行し始めた。
気持ちは分からないでもないが、もはやフカセ釣りとしての体を成していない彼の釣りは全ての釣りを放棄した究極形かのような様相を呈していた。
わたしは置き竿でフカセ釣りをする彼の心情を推し量っていたが、まったく見当がつかずただただその地獄絵図を眺めるばかりであった。
まもなく磯でぐたっと横になって睡眠をとり始めた彼と同じくしてわたしはカゴ釣りのタックルを仕舞った。
早々に磯から離脱して、三崎堤防に釣りの様子を見に行ったのはまだ昼の12:00もまわってない頃だった。
もう釣りのモチベーションは使い切っていたから釣り道具は車に積み込み終わって、堤防で釣りをしている人たちを眺めにいくだけだったんだけど。
釣れてない同じ心境の人間見てるのって癒されるよね ♪ (この日だけですヨ)
最低な人間だと思われるかもしれないが、それほどまでに我々の釣りへのモチベーションは下降の余地がなかったのだ。
しばらく釣れない釣り師達を眺めたあと、我々は昼食をとるため定食屋に入った。
釣りらしい釣りもしておらず時間も早いのでわたしはラーメン並を注文し、OKN氏は大盛り蕎麦を注文した。
料理を待つ間OKN氏がモゾモゾとおかしな動きをしはじめたので、どうしたのだろうと尋ねると夢にも思ってないような驚愕の返答が返ってきたのでうろたえてしまった。
なぜこの場面で・・・
「財布が無い」
この時点ではまだ財布の在処はかなりの可能性を残していたから特段焦る様子もなかったのだが、この後その可能性を一つ一つ失っていこうとは・・・・
まだ料理も来ないうちにOKN氏は一番可能性のありそうな車へと走り出した。
わたしはひとり店内で料理を待ちながら、どうせ磯に財布は持って行かず車に置いていったに違いないからすぐ財布を見つけて戻ってくるだろうと考えていた。
しかし車との距離を考えても彼の帰ってくる時間があまりに遅かったため彼がその可能性を失ったのだということを把握することは容易だった。
「車にもない」
あぁ・・・でしょうね・・・あったらすぐ帰ってくるもんね。
大方車に置いてきたと想像していたわたし以上にOKN氏の焦りは尋常ではなかったに違いない。
そうこうしているといいタイミングでラーメンと蕎麦が配膳されたため、食べてしまってから探そうということになったが彼は運悪く“大盛り”を注文していたためすぐ財布探しに移行することができず味がしないであろう蕎麦をのどに掻き込んでいた。
彼の運の悪さはあそこで“大盛り”を注文するところにも表れていたのだ・・・しかしもう飯はいいから探しに行こうって時に料理出てくる“配膳のタイミング”も運悪いけどね!
せかせかと飯を食べ終えた我々は釣りとは全く関係のない“財布探しの旅”に出るのであった・・・・
さて財布はスペインの高級ブランド“ロエベ”、内容物 諭吉2枚・クレジットカード数枚である。
被害総額は10万円。
運がいいかどうかは知らないが免許証だけは小銭入れに移していたらしい。
聞けば彼は財布をフローティングベストの下に着ていたジャケットのポケットに突っ込んでいたらしい。
車に置いて磯に行こうか迷ったあげく持って行ったということだけは記憶にあるらしく、車にあるという可能性は無いとのことだ。
まぁ疑い深いわたしは車をくまなく探したが確かに無かった。
ということはもう我々が移動した道中かポイントで落としたという可能性しか残されていない。
言っても城ヶ島は広くないし、移動した距離も長いわけではない。
我々が歩いた経路だって覚えているし、その間で落としたのであれば来た道をまた戻って歩けば見つかる可能性は高い。
問題は“第三者による関与と海への落下”である。
もしこれらによる紛失であれば見つかる可能性はほぼ無いに等しい。
ここが山であればかなりの可能性を残していたのだが、こうなってからでは仕方あるまい。
我々は朝磯に入る道順と同じ経路で再度歩き始めた。
まだ心に余裕があったのは、釣り場のポイントで落としたという可能性が高かったからだろう。
釣りを諦めて横になったりしていたからそこで落としたに違いないと、急ぎ足でポイントまで向かったが釣りをしていたポイント付近にそれらしき影は無かった。
あとは帰りの経路だが、ここで発見できなければいよいよ“第三者による関与と海への落下”可能性が高まる。
目を凝らしながら経路をたどったが財布は無かった。
念には念をとまた来た道を折り返し、往復してみたが結果は変わらなかった。
磯を2往復したが見つからないとなると絶望的である。
とりあえず我々はあきらめにも似た感情を抱きながら城ヶ島にある交番へ、後々見つかった時への対処として遺失物届を提出しに向かった。
OKN氏が遺失物届を書く間、交番で勤務されていた警官の方曰く、城ヶ島で落とした財布は95%の確率で三崎警察署へ届けられるらしい。
なかには80万円入りの財布が手つかずのまま届けられたということだから世の中捨てたものではない。
統計を取って数値を出したものとは思えないが95%というのはかなりの高確率である。
磯を往復し可能性を失ったものと勝手に判断していたがこれほどの高確率であれば希望が開けるのではないだろうか。
その後磯をもう1往復したが財布は見つからずさすがに諦めもついたのかOKN氏はクレジットカード会社に連絡を取り、警察からの「発見」の返事を待つこととした。
そうして我々は前哨戦として士気をあげるどころか、暗鬱とした気分をこしらえて、城ヶ島から翌日のアシカ島釣行に向けて体力を回復するべく本日の宿となるOKN氏宅へと向かうのであった。
彼の財布の顛末については次回アシカ島釣行の記事で書こうと思います。
ではこうご期待。
Comments